東京高等裁判所 平成12年(ネ)2282号 判決
主文
一 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
二 被控訴人の請求を棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一申立て
一 控訴人
主文同旨
二 被控訴人
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二事案の概要
事案の概要は、次のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決書五頁五行目の「午後〇時二五分」を「午前一〇時三〇分」に、同一二頁八行目の「村岡代表代行」と」を「村岡代表代行=28日午後5時2分、東京・霞が関の法務省別棟」と記載され、<1>の大見出しの下の位置に「「公安庁はコソ泥」立会人が抗議声明」との小見出し(横書き)に続いて前日に行われた破防法弁明の手続打切に関する記事が」にそれぞれ改め、同一三頁二行目の「小見出し」の次に「、その下に破防法弁明の手続打切に関する記事と「教団“自主弁明”開催へ」の中見出し(縦書き)、「公安庁の打ち切り通告に怒号」の小見出し(縦書き)」を加え、同一四頁五行目の「第四段落」を「第五段落」に、同七行目の「第五段落」を「第六段落」に、同一五頁一行目の「第六段落」を「第七段落」に、同三行目の「第七段落」を「第八段落」に、同一六頁一行目の「第八段落」を「第九段落」に、同二一頁九行目、同二二頁五行目及び同六三頁六行目の「第七段落」を「第八段落」にそれぞれ改める。
二 控訴人の当審における補足主張
1 既に述べたように、本件記事は被控訴人がオウム真理教の現信者であるとか、あるいは被控訴人がオウム真理教の組織的な犯罪を実行したという印象を読者に与えるものではない。また本件記事の重要な部分は、被控訴人が本件密輸事件で逮捕されたこと及び右事件にオウム真理教が関与している可能性があることの二点であるが、前者は真実であることに争いがなく、後者についての真実性の証明はされており、そのほかの点についても記事で指摘した可能性の存在を信じる相当な理由があった。
2 仮に、被控訴人の請求が認められるとしても、損害は僅少であり、取消し広告を掲載すべき必要性はない。
三 被控訴人の認否、反論
1 控訴人の主張1は争う。真実性の証明対象は「被控訴人がオウム真理教信者の可能性があるということ」ではなく、「公安関係者は被控訴人を信者とみている」等の個別の事項であり、その証明はされていない。
2 同2は争う。被控訴人が受けた精神的苦痛は甚大であり、被控訴人の低下した社会的評価を回復する措置は必要である。
第三証拠関係
証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。
第四当裁判所の判断
一 名誉毀損の成否について
新聞記事による名誉毀損の不法行為は、問題とされる表現が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、成立し得るものであり、記事が他人の社会的な評価を低下させるものであるかどうかは、記事の本文の内容だけでなく、見出しの文言、体裁や当時の社会情勢をも総合的にみて、新聞の一般読者がその記事を普通の注意と読み方をもって読んだ場合に受ける印象を基準として判断すべきである(最高裁判所平成九年九月九日第三小法廷判決・民集五一巻八号三八〇四頁参照)。
そこで、以下この観点に立って本件記事中に被控訴人主張の事実の摘示がされているかどうか、これが被控訴人の名誉を毀損するものであるかどうかについて順次検討する。
二 本件記事の名誉毀損性について
1 本件記事の内容、本件記事の掲載に至る経緯及び本件配信記事の内容等は前記引用にかかる原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」3及び4に記載のとおりであり、右事実と乙六を合わせると、控訴人は、平成八年六月二九日の「スポーツニッポン」紙上に、本件記事を掲載するとともに、その左側に前日に行われた破壊活動防止法(記事中では「破防法」と記載されている。以下「破防法」という。)の第六回弁明手続に関する記事を本件記事とほぼ同程度の紙面を割り当てて掲載(写真を除く記事本文と見出しによる比較)し、両記事の中央に右弁明手続を終えて会場を出る教団村岡代表代行の姿を撮影した写真を掲載したことが認められ、これによると、前記「オウム」の大見出し、「村岡代表代行「尊師は死んだに等しい」はずが・・・」及び「破防法第6回弁明」の各中見出しや中央の写真はいずれも本件記事に関する記載ではなく右弁明手続に関するものであると認められる。
2 被控訴人は、本件記事は一般読者に対し、<1>被控訴人はオウム真理教の信者であること、<2>被控訴人はオウム真理教の非合法活動を行う者であることの二つの事実を断定し、<3>被控訴人はタイ国に潜伏しているオウム真理教の信者二〇人の一人であるとの事実を示唆しており、この点において被控訴人の名誉を毀損していると主張する。
しかし、乙六によると、本件記事のうち被控訴人がオウム真理教の信者であるとの事実に関係するものとしては、中見出しの「タイから帰国の信者逮捕」、第三段落の「公安関係者は信者とみている。」、リード部分と第六段落の「信者とみられる男性」、第五段落の「A容疑者の自宅を捜索したが、オウム真理教のチラシや本などが見つかったという。」といった記載がされている反面、第二段落の「オウム真理教の荒木浩広報副部長によると、A容疑者は、在家信者として一九九二年二月から九四年十月までの間、同教団の元杉並道場に所属していたが、活動にあまり熱心ではなく、会費切れで自動的に退会になったという。」、小見出しの「教団「すでに退会」」、第三段落の「千葉県警の調べに対し、本人は信者であることを否定しているが」、第七段落の「A容疑者は調べに対し、教団の信者であることを否定しているほか、」のように信者であることを否定する内容の事実関係や右事実を否定する被控訴人の弁明も相当の紙面を割いて記載されていることが認められ、以上のような本件記事の掲載方法や内容等を総合すると、本件記事は、一般読者が当初「タイから帰国の信者逮捕」の中見出しにより被控訴人がオウム真理教の信者であると考えたとしても、本文を読み進むにつれて、本件記事中に被控訴人が断定的と主張する記載があるとする見方が正確なものではなく実際には被控訴人がオウム真理教を既に退会している可能性があることを理解できる内容になっているものと認めることができる。したがって、本件記事は被控訴人がオウム真理教の信者であるとの事実を摘示した記事ではなく、被控訴人の弁明や教団の説明にもかかわらず被控訴人が当時なおオウム真理教の信者である可能性が高いとの見解を表明したにすぎないというべきである。
また被控訴人がオウム真理教の非合法活動を行う者であるとの事実については、リード部分の「改めて教団の非合法活動が浮き彫りになった形だ。」、第九段落の「同県警などは、A容疑者がタイなどに十数回渡航していることから、教団の組織的な密輸の可能性もあるとみて捜査を進める。」、第八段落の「この事件で注目されるのは特別手配中のB容疑者、C容疑者らとの関係。」との記載があるにすぎず、被控訴人がタイ国に潜伏しているオウム真理教の信者二〇人の一人であるとの点についても、右記載に続けて、同じ第八段落で「教団信者らと共謀して東京海上火災保険から五億円を脅し取ろうとしたなどとして恐喝未遂の罪に問われた元総会屋・D被告(五〇)は、調べに「(B容疑者やC容疑者は)信者二十人とともにタイ北部にいる」と供述。タイ移民局の関係者もD被告がB容疑者らの逃亡をタイ国内で手助けしていたことが強いとしている。」と記載し、中見出しで「林、C容疑者も関与か」としているだけであって、オウム真理教の関与や、林、C容疑者と被控訴人との具体的な関係等については何ら記載されておらず、これを疑わせる根拠となるような事実の摘示もされていない。
なお、前掲<1>「オウム」、<2>「ヘロイン密輸」の二つの大見出しは同じ地模様(灰色無地)の一つの区画の中に収められており、これを続けて読むと「オウムヘロイン密輸」と読むことができ、これに続く前掲<4>の中見出しと合わせると、本件記事はオウム真理教の教団がヘロインを密輸しこれを実行したのが信者である被控訴人であるという内容であることを右各見出しによって明らかにしたもののように見られる。このように一見誤解させるような体裁になっているが、記事の内容からすると前記のように「オウム」という<1>の大見出しは破防法の弁明手続に関するものであることが判読できるから、この点は上記判断を動かすものではない。
そうすると、本件記事は、被控訴人が本件密輸入事件で逮捕された事実を報道するほか、被控訴人が否定し教団も既に退会したと説明しているものの被控訴人が今なおオウム真理教の信者である可能性があることを指摘し、千葉県警などは本件密輸入事件がオウム真理教の組織的な密輸として行われた可能性もあるとみて捜査を進めるとしていること、元総会屋のDがB容疑者やC容疑者が信者二〇人とともにタイ北部にいると供述していること等の事実を指摘して被控訴人の犯行がオウム真理教の組織的な犯行である可能性やB容疑者やC容疑者の関与も考えられるとの見解を表明したものであり、被控訴人が主張する事実の摘示をしたものということはできない。この点の被控訴人の主張は採用することができない。
3 もっとも、特定の事実関係の存否についての疑いや可能性を表明する記事であっても、その内容によっては、読者がそのような疑いを抱くことによりその者の社会的評価が低下する場合のあることが考えられる。そして、本件記事が掲載された平成八年六月二九日当時、地下鉄サリン事件等一連の犯罪行為に関係しているとしてオウム真理教の強い反社会性が指摘され、教団に対する強い非難と否定的感情が社会一般に浸透していたことは公知の事実であるから、オウム真理教の信者であること、オウム真理教の組織的な犯罪に加担したこと、あるいはオウム真理教の信者であるB容疑者やC容疑者と関係があることの各事実は、その者の反社会性や犯罪傾向等を社会に印象づける要因となる事実であるといわなければならず、そのような事実があることの疑いや可能性を指摘ないし示唆されることによっても、その者の社会的評価が低下すると合理的に判断することができる。
前記認定の事実関係によると、本件記事は、教団や本人の弁明等を記載しているものの、第三段落の「公安関係者は信者とみている。」や第五段落の「A容疑者の自宅を捜索したが、オウム真理教のチラシや本などが見つかったという。」といった記載等により被控訴人がオウム真理教の信者である可能性が高いとの見解を表明しており、そのような可能性があると読者に思わせる内容となっていることが認められるから、被控訴人の社会的評価を低下させる記載であるということができる。
しかし、本件密輸入事件がオウム真理教の組織的な密輸として行われたことの可能性やオウム真理教の信者であるB容疑者やC容疑者が被控訴人の本件密輸入事件に関与していることの可能性をいう記載については、被控訴人がオウム真理教の信者であると疑われること、被控訴人がタイなどに十数回渡航していること、元総会屋のDがB容疑者やC容疑者が信者二〇人とともにタイ北部にいるとの供述をしていること、千葉県警などがオウム真理教の組織的な密輸の可能性もあるとみて捜査を進めるとしている等の記載がされているだけであり、被控訴人と林らを結びつける事情を含めて具体的な事実の記載はなく、捜査機関においてもオウム真理教の組織的な密輸の可能性を視野に入れて捜査を始めるという以上のものではないから、これを読む読者に対してそのような可能性のあることを積極的に示唆して訴えかけるものではない。
そうすると、本件記事のうち右二点については、被控訴人がオウム真理教の信者である可能性が高いとの見解を前提として、場合によると右のような組織的犯罪である可能性も考えられないではないという抽象的な可能性を指摘したにすぎず、これ自体により被控訴人の社会的評価を低下させるというものではないから、被控訴人の名誉を毀損する記事であるということはできない。
三 違法性阻却事由の存否について
1 事実を摘示して行われる名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、右行為には違法性がなく、仮に右事実が真実であることの証明がないときにも、行為者において右事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される(最高裁判所昭和四一年六月二三日第一小法廷判決・民集二〇巻五号一一一八頁、最高裁判所昭和五八年一〇月二〇日第一小法廷判決・裁判集民事一四〇号一七七頁参照)。
一方、ある事実を基礎として意見の表明ないし論評をする形態の名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、右意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、右行為は違法性を欠くものというべきである(最高裁判所昭和六二年四月二四日第二小法廷判決・民集四一巻三号四九〇頁、最高裁判所平成元年一二月二一日第一小法廷判決・民集四三巻一二号二二五二頁参照)。
2 前記のとおり、本件記事は被控訴人が本件密輸入事件の嫌疑で逮捕された事実について、逮捕の事実、嫌疑の内容に加えて右犯行の背後関係ないし動機を報道したものであり、被控訴人がオウム真理教の信者である可能性があること等から右犯行が教団の組織的な行動としてされた可能性があるとして、オウム真理教に対する取材の結果、タイ国内にオウム真理教信者のB容疑者やC容疑者が潜伏している可能性のあることや、被控訴人の本件密輸入事件に関与している可能性があること等の記載をしたものである。一方、被控訴人の嫌疑は約二・二キログラムという多量のヘロインを密輸入して所持していたという重大な事犯であり、これにオウム真理教が組織的に関与していたとなると事件の重大性や反社会的性格が更に強まること、オウム真理教の現状、動静等については社会的に強い関心があること、本件記事掲載日の前日にはオウム真理教について破防法の第六回弁明手続が開かれたことを考えると、本件密輸入事件の背後関係にオウム真理教が関係しているかどうかは社会的に報道すべき公共の利害に関する事実関係であるといわなければならない。したがって、本件記事は全体として公共の利害に関する事実の報道であるということができる。そして、右のような事情を踏まえて本件記事の内容、体裁を検討すると、本件記事は犯罪事実の報道としての範囲を逸脱しているとはいえないから、全体として専ら公益を図る目的であると認めることができる。
3 そこで、本件記事が被控訴人がオウム真理教の信者であることの可能性を表明している点について違法性阻却事由の有無を検討する。
(一) 乙七によると、本件記事掲載の当時控訴人の社内で現場の記者に対する指示と記事の出稿責任を負っていた文化社会部次長(デスク)石井真人は、補助参加人から本件配信記事の配信を受けた後、部下である文化社会部の早川巧記者らに原稿作成を指示したこと、早川記者はまずオウム真理教の荒木浩公報副部長に電話で取材し、被控訴人が以前オウム真理教の信者だったが会費切れで退会になった旨の情報を得たこと、同記者はまた控訴人のいわゆる関連媒体に事実関係を確認したところ、被控訴人は千葉県警の取調べに対しオウム真理教の信者であることを否定しているが、同県警は被控訴人を信者であるとみており、オウム真理教の組織的な密輸の可能性もあるとみて捜査を進めているという情報を得たこと、同記者はさらに公安関係者からも被控訴人がオウム真理教の信者名簿に載っているとの情報を得たこと、そこで同記者は配信記事に取材結果を加味してリード部分及び本文を作成し、石井デスクがその内容をチェックして本件記事を完成させたこと、以上の各事実が認められる。
(二) また丙二ないし六及び弁論の全趣旨によると、被控訴人は平成四年二月にオウム真理教の信者となったが、その後は会費を納付せず集会にも参加しなくなり、平成六年一〇月(又は同年一二月)ころ自然に退会したようになったこと、教団は被控訴人が同年一〇月ころに教団を退会した旨捜査機関や報道機関等に説明していること、しかし、被控訴人は信徒証を教団に返還しておらず退会の事実関係は明確でないこと、本件密輸入事件の関係で被控訴人の自宅が捜索された際にはオウム真理教のチラシや本が押収されていること、また密輸入されたヘロインが多量であって個人的な犯行と考え難いこと、捜査に当たった千葉県警の担当者らは被控訴人の犯行がオウム真理教の組織的犯行としてされた可能性を視野に入れた捜査を行ったほか、被控訴人がオウム真理教の信者であるとの疑いを抱き、この点について被控訴人に供述を求めるなどの捜査を行っていたこと、控訴人補助参加人の記者である新崎盛吾は同僚記者らを通じて千葉県警や公安調査庁関係の情報を入手するとともに、千葉県警に対する取材により右押収関係の事実を把握し、教団東京総本部に電話をかけて被控訴人が信者であるか否かの確認を行うなどの取材をした上、本件配信記事を作成したこと、その後の捜査の結果、被控訴人の前記犯行はオウム真理教とかかわりのない個人的な犯行として立件されたことが認められる。
(三) 以上の事実によると、本件記事が掲載された当時には、被控訴人が教団を退会した事実は外部に明らかでなく、被控訴人宅からオウム真理教のチラシや本が押収されていた上、公安関係者は被控訴人が信者であるとみて捜査を進めていたという事情が認められ、こうしたことからみて当時なお被控訴人がオウム真理教の信者であることが相当程度疑われ、教団や被控訴人がこれを否定する説明をしたからといって直ちにこれを信用できる状況にはなかったということができる。また控訴人が本件記事中で被控訴人がオウム真理教の信者であることの可能性を表明した基礎となる事実関係(右チラシ等の押収の事実や捜査機関が被控訴人がオウム真理教の信者であるとの疑いを抱いて捜査をしていた事実)が真実であることは前記のとおりである。そして本件記事の記載内容についてみても、前記のとおり、見出しに「タイから帰国の信者逮捕」と断定的な表現を用いている点は適切といい難いものの、ほかの小見出しで「教団「すでに退会」」と記載し、本文中でも被控訴人本人が信者であることを否定している旨を記載しており、第三段落で「公安関係者は信者とみている。」、第五段落で「A容疑者の自宅を捜索したが、オウム真理教のチラシや本などが見つかったという。」の各記載をしている反面、信者であることを否定する事情として、被控訴人が信者であることを否定していること、教団が退会した旨の説明をしていること等についても記載をしていることが認められる。。これらの諸点を勘案すると、本件記事の記載が意見表明の方法として相当な範囲を逸脱したものということはできない。
(四) そうすると、控訴人が本件記事中において被控訴人がオウム真理教の信者であることの可能性を表明した点については、控訴人がそのように判断する基礎となった事実関係が真実であり、本件記事の内容及び記載方法においても意見表明の方法として相当な範囲を逸脱したものとはいえないから、不法行為についての故意過失を認めることはできない。
四 被控訴人の請求について
以上によると、本件記事のうち、被控訴人がオウム真理教の信者である可能性を表明した点については不法行為の故意過失がなく、オウム真理教の組織的犯行や林、C容疑者との関係の可能性を指摘した部分は被控訴人の名誉を毀損する記述とはいえず、いずれも名誉毀損を構成する不法行為ということができないから、被控訴人の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がない。
第五結論
よって、原判決中、被控訴人の請求を認容した部分は不当であるから取り消し、被控訴人の請求を棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法六七条二項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 新村正人 裁判官 宮岡章 裁判官 笠井勝彦)